こんにちは、ちょこです!
当月にアップロードできるデータ容量の上限に引っ掛かったので図らずも連日の書籍紹介です。
本日紹介するのは「ユーザインタフェース開発失敗の本質」です。
成功の再現性よりも失敗の再現性の方が簡単だと感じており、それであれば先人の失敗を知り、回避することで楽に物事が進められるのではないか、と考え購入してみました。
基本的には著者の主張で構成されており、読みやすい印象を受けました。
全体としては連載記事を読んでいる感覚です。
PS3やwii、DSなどが活躍していた頃のゲーム業界が登場するため、ゲーム業界の過去を知ることにも有効だと感じました。
さて、早速ですが書籍の概要と、それぞれの章に対する感想を述べてみます。
ます、書籍の概要を紹介するためにamazonのページに書かれている紹介文を引用します。ここに書いてあることがほぼ全てですね。
iPhoneはユーザインタフェースが圧倒的な商品力に結びつくことを示した。しかし「ではiPhoneのようなものを」と新しいユーザインタフェースを開発しようとし、失敗した例は枚挙にいとまはない。なぜ失敗するのか。ありがちな8っつの失敗パターンを分析。
-ユーザビリティ原理主義
-アルゴリズム原理主義(及びロンギング原理主義)
-すごいデバイス原理主義
-多機能原理主義
-人に「自然」なインタフェース原理主義
-エージェント原理主義
-ユーザの声原理主義
-メタファー原理主義その上でその根底にあるの4つの根源的な問題について述べる。
問題その1:フレーム問題
問題その2:記号接地問題
問題その3:真面目に道を極めると会社が滅ぶ:イノベーションのジレンマ
問題その4:「革新」に対する矛(ほこ)と盾(たて)最後に「ではどうすればいいのか」についていくつかの事例をもとに論じる。
では、各章の簡単な紹介と感想です。
第1章:なぜこのような本を書くことにしたのか
1章というよりプロローグとして見るのが良い気がします。
この章で述べられていることはこの章の最後の文章でまとめられている印象を受けました。
天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。
これは「マキャベリの手紙」から以下の言葉が引用だそうですが、失敗を学ぶことでプロジェクトを成功に導く手助けになれば良いな、と感じました。
この書籍の原稿が書かれている当時、
筆者の周囲では、iPhoneの登場によってiPhoneのクオリティを基準とした依頼が多く発生し、多くの失敗を見てきたそうです。当時の状況に思いを馳せる感じで読んでいました。
第2章:失敗に導くもの
開発に携わる中で、開発が失敗に終わる思想が紹介されていました。
紹介されているのは以下の8種類の原理主義の思想です。
どれも身近に存在し、心当たりのある事柄に感じました。
見出しだけでも読み返して、定期的に省みるだけでも良いのかもしれません。
詳しい内容は書籍の中身を確認してみて欲しいところですが、例えば「多機能原理主義」は多機能がユーザーの利便性に繋がると強く考えることだと認識しておけば良さそうです。
このような各々の思想が開発を失敗に導く理由は極端な思想だからなのかな、と感じました。
現実は複雑なものであるにも関わらず、人は単純なものを明快に断言するものを好む傾向があります。
極端な思想は時にカリスマ性を生みますが、多くの人々が関わる場面では極端な思想は排斥されるため、ある程度の中庸さが必要になってくるのかもしれません。
UIが相手にするのは現実の人間です。
現実の人間は常に合理的に行動するのではなく、矛盾と曖昧さを含んでいます。
故にUIを設計する際には一つの思想に染まるのではなく、複数の思想を理解し、柔軟に取り入れることが肝要だと感じました。
第3章:失敗の本質の一部
2章で思想面から見た失敗の事例が述べられていました。
3章では、環境面で見たときに、なぜそれが発生するのか、という話を4つほど挙げられてます。
- フレーム問題
- 記号接地問題
- 真面目に道を極めると会社が滅ぶ:イノベーションのジレンマ
- 「革新」に対する矛(ほこ)と盾(たて)
こちらも各問題の詳細は本を読んでもらいたいのですが、例えばフレーム問題では
障害物競走において、ロボットが人間に勝つようにするためにはどのような問題を解決するのが良いか、という話が取り上げられています。
仮にロボットが人間に勝利する場合は、上限をある程度枠組みを絞った中での勝利になる、という話です。
個人的には自動車の自動運転の技術がこれに近い問題を抱えているように感じました。2022年の自動運転は6段階のレベルに区分されており、その中での操作性の向上を目指しています。この「レベル」が詰まるところの「フレーム」に該当するのかな…、と。
第4章:山の向こうにも続いているかもしれないいくつかの細い道筋
2章と3章では失敗する思想と環境について述べられていました。
最終章である4章では「ではどうすれば良いのか?」と言うことについて述べられています。
ここでは以下の2つのステップに分けて紹介されていました。
「ステップ1:正しい芽を選ぶために」
「ステップ2:生まれた変化の芽を育てるために」
それぞれざっくり言うと「発見」と「組織への提案」なのかな、と感じました。
ステップ1で得られた発見を、ステップ2に適切に繋げることで失敗を事前に回避できるのではないかと言う話かな、という印象です。
では、紹介していきたいと思います。
ステップ1:正しい芽を選ぶために
ここでは筆者の体験談をもとに、製品のクオリティを突き詰めるだけではなく、サービスを使うユーザーに向き合うことで新たな発見が得られる、という話が説かれていました。
確かに、サービスを開発している時はついつい内側に視野が狭くなりがちです。
一見すると目の前の製品や書籍に目を通して正しい知識を得たように感じることもありますが、外に出てサービスを使っているユーザーの言動を観察しないと知らない内に偏った思想に陥ってしまうのかもしれません。
ステップ2:生まれた変化の芽を育てるために
こちらも歴史上の出来事をもとに、良いアイディアであっても組織からの支持はなく、それどころか抵抗にあうことを理解しておく必要がある、ということが書かれていました。
UIデザイナーは、周囲に対して価値観の提案をし、共感が得られなければなりません。
共感が得られなければ組織に対する影響は限定的で、失敗の回避も難しくなっていまいそうです。
この章のタイトルにある「かもしれない」「細い道筋」という言葉からもにじみ出ている通り、かなり分が悪い賭けであることを分かった上で希望を含んでいる様な複雑な心情が読み取れました。
他の書籍も以下にまとめています。
以上です。
失敗に対しする議論を行う際の取っ掛かりになるかもしれません。
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