こんにちは、ちょこです!
今回、私が購入した書籍の中からゲームUIデザイナーさん向けに紹介する書籍はこちらです!
「インフォグラフィックスの潮流:情報と図解の近代史」
全体の感想
基本的には読み物系です。
デザインだけではなく、人物に焦点を当て、どのような経緯でデザインが成立してきたかが紹介されています。情報やストーリーをどのようにビジュアルに落とし込んできたのか、という歴史に興味がある方だと面白く読めるかもしれません。
教科書や技法書の類ではないので「今すぐ素晴らしいアイコンを作りたいんです!」という情報を求めてる方には向いてないかも…。そういった意味ではやや中級者向けに感じました。
構成としては以下の7章立てで書かれています。
- 第1章 都市交通図ーモダニズムの美学
- 第2章 図解と統計ー啓蒙の時代の情報図
- 第3章 視覚言語ー20世紀の冒険(1)
- 第4章 可視化と物語化ー20世紀の冒険(2)
- 第5章 関係図ー比喩から抽象へ
- 第6章 コードのかたちー大量情報の時代
- 終章 情報と図解の近代史
物語として話が続いているわけでもないので、ざっくり全体を通して読み、興味が持てる部分があるか、俯瞰して読んでみるのも良いかもしれません。私の場合はこの手のデザインの歴史に馴染みが無さ過ぎたためか、最初から読み始めてみても理解しづらく感じました。
むしろ後ろの章から読み進め、前の章に戻る読み方をしたところ、歴史をさかのぼる感じで読めたため、徐々に理解することができました。
歴史で例えるなら、あまり馴染みのない縄文時代から学ぶよりも、手ごろな近代から興味のある部分を学び、徐々に歴史をさかのぼる読み方の方が性に合った次第です。
以下は各章で面白く感じた部分の感想などを書いていきます。
1:「第1章 都市交通図ーモダニズムの美学」の感想
この章では地下鉄の路線図のデザインの起こりを中心に興味深く読むことが出来ました。インフォグラフィック系の書籍だと、地図や路線図が登場する頻度が高いように思えています。
路線図ってよく考えてみると不思議ですよね。
地理的な特徴の再現ではなく、移動をしやすくするという目的のために作られている。
そういう意味では地図ではなく工程を示すフロー図に近いのかもしれません。
章の最後はスマホなどの技術の発展と普及によって路線図の見せ方も変わってきている話で締められています。2023年現在、ネットで路線を調べると、出発駅から到着駅までの2点で繋がれているような見せ方になっています。技術の発展と共に路線図が変わっていくということであれば、今後路線図はどういう見せ方になっていくのか気になります。
余談ですが、路線図を初めて作ったのがハリー・ベックという電気回路製図工というのも面白かったです。電気回路製図工なのになんで路線図を…。
しかも勤務時間外でやっていたようなので、趣味ですね…。何だこの人…。変わった趣味すぎる。
「休日何やってます?」って話を振って「休日は路線図書いてますね」って回答が返ってきたら超興味湧きます。
2:「第2章 図解と統計ー啓蒙の時代の情報図」
15世紀から18世紀頃の百科事典の挿絵の話が中心です。
当時、写実的な絵画ではなく、図として分かる絵の需要があったようです。例えば植物であれば、どの季節に見てもその植物だと分かるように花と実を同時に描くなどの工夫が見られ始めました。
専門的な情報を写実とデフォルメを使い分け、大衆に受け入れやすく伝えていくアイディアは興味深いです。
また、棒グラフや折れ線グラフなど近代のグラフの話も紹介されていました。これらのグラフ類の歴史は概ね18世紀から始まっており、歴史としてはかなり浅いという話は驚きました。
グラフについては実際の事例をもとにどのように使われていたのか紹介されています。紹介されている限りでは、デザインについては現代と大きく差はないように見えます。
ある意味、登場当初から完成度の高い見せ方であったのかもしれません。
(数百年後にはより効果的な見せ方が出てきてるかもしれませんが)
3:第3章 視覚言語ー20世紀の冒険(1)
20世紀初頭にグラフなどを用いて統計データを視覚化した発端などが紹介されています。デザイナーではなくエンジニアが中心となってこれを作ったとのこと。
アイソタイプの生まれの話もありますが、デザイン云々よりもデザイナーの生い立ちにも焦点が当てられていました。東京五輪のさらに以前の話なので、ピクトグラムの歴史に興味があれば面白く読めるかもしれません。
4:第4章 可視化と物語化ー20世紀の冒険(2)
図解やデータビジュアライゼーションの話が紹介されています。
図解を指して「過度な装飾はインクの無駄」という視点と、図解は大衆にとって受け入れやすかった、という視点が興味深かったです。
UIでも過度な装飾はあまり好まれない傾向がありますが、ゲームUIは世界観をビジュアルで表現することが求められやすいです。
そういった意味で、伝える情報量とそれに掛かる装飾の程度についての議論は親近感を覚えました。
5:第5章 関係図ー比喩から抽象へ
この章では中世の樹形図、系統図、家系図を起点とし、現代の抽象化されたダイアグラムまでの流れが紹介されています。
興味深いのは仏教などの曼陀羅も関係図として紹介されている点です。
今まで曼陀羅を関係図として見てきたことがなかったので、新鮮な気持ちで捉えられました。
ゲームUIに置き換えると、現代的なダイアグラムを参考にするとスタイリッシュなデザインが出てきますが、過去のデザインを学ぶことで、ゲームの世界観を取り入れた新しいダイアグラムがデザインできるかもしれません。
例えば、曼荼羅は文字が読めない人にも有効な関係図です。そういった意味では多言語対応を見越したデザインが考える時のヒントになるかもしれないと感じました。
6:第6章 コードのかたちー大量情報の時代
コンピューターとグラフィックの話が中心です。
ピクセルで構成されたのグラフィックについて「まだピクセルということばがなく、ブロックポートレートとよばれていた」と言う話は知りませんでした。
考えてみれば当然ですが、ピクセルということばが無かった時代があるのですね…。黎明も黎明…。
7:終章 情報と図解の近代史
この章は著者のメッセージそのものなので、最初に目を通すことでこの書籍を俯瞰的に眺められる気がします。
主な内容としては、本編の内容に触れつつ持論を語っています。
面白く感じたのは主に以下の2点です。
- 写真の発明に端を発した「客観的な視覚体験の定着」という視点
- 技術によって変化した人間の感覚が「図の変化要因」のひとつであるという視点
確かに、今では写真を通して客観的な視覚体験を得ることは簡単かもしれませんが、写真の普及以前は客観的な視覚体験を得ることは難しかったのかもしれません。人がインプットする情報の変化によってアウトプットも変化する、という感覚なのかな…。
以上です。
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